手紡ぎを仕事にするために知っておくこと・必要なことってなんだろう
さて、どんなことでも 仕事にできる 人様から対価をいただく というためには、何らかの努力や、スキルが必要となってきます。そのへんからまずは、考えてみることにします。
手紡ぎ糸の個人販売には絶対に必要だと思うこと
私は、「ほわほわの手仕事倶楽部」という手紡ぎや手織りを中心とした羊毛に関するハンドメイドのサイトを運営しています。その付属ショップ「ぽわぽこ毛糸店」では、手紡ぎ作家さんの紡いだ糸の販売をさせていただいております。その中で感じることをまず お話していきたいと思います
紡ぎの技術は必須
まず必要なのは、糸を紡ぐ技術
まあ 当たり前といえば当たり前ですが、やはり、手紡ぎ糸の専門店を運営していて思うのは、技術のある作家様のものは、少しぐらい値段が高くても売れていく ということです。
「ぽわぽこ毛糸店」には、27名の手紡ぎ作家様がおいでなのですが、その中には、まだまだ未熟かなと思う方も何人かおいでです。
当店で作家様にご登録いただくときには、作品の技術だけでなく、作品作りに対する姿勢 心構えなども 考慮して選考の上採用させていただきます。
技術は未熟でも、この方はいずれ上手くなるだろうな と思うことができる作家様は登録させていただきます。
しかしながら、そういう作家様の毛糸は、最初は全く売れていきません。それでもがんばっている作家様は、一年二年三年目に入り、上手になっていくうちに ひとつ 二つ売れ始めていきます。
最初に納品された糸と比べても 上手くなったな と内心思いながら写真を撮ってネットショップへアップしています。
手紡ぎ作家さんのセンス・感性・個性
その作家さんのものだと一目でわかる 感じる 何かがあるというのは、とても大切だと思っています。 作家様 一人一人に全く別のセンス 感性 といった個性を感じます。
色使い 糸の紡ぎ方の個性 やわらかさ 撚りの強さ などなどその人の感性が伝わってきます。 当店も三年目になりますが、作家様ひとりひとり その紡ぎの手が違うのを感じます。
その作家様が求める糸がそれぞれちがい、また それをお求めくださるお客様もそれぞれに求めるものがちがうので、作家様それぞれに、やがてお客様ができてきます。
販路の開拓
自分の紡いだ糸を販売しようとした時、最初にぶつかる壁がこの販路開拓だと思います。
どこで売るのか どうやって売るのか これは、作家様ごとにちがうと思います。 SNSを利用して その中で販売してしまうスタイルの方も多く見受けられますし、ミンネ や クリーマ iichi などのハンドメイドサイトでの販売をされる方も数多くいらっしゃいます。その他 委託販売店に委託されたり、イベントに参加されて販売するなど いろいろな方法で販売活動をされています。
ご自宅の一部をショップにして、おうちショップをされている作家様もいらっしゃいますよね
カルチャースクールの先生をされたり、ワークショップを開かれている方もいらっしゃいます。
これについては、また いずれ詳しいことを記事にアップしていきたいとおもっていますが、まず最初に悩むのがこの販路をどう作っていくかだと思います。
ファンの獲得
作品を待ってくれているリピーターのお客様を作ること
これは、最重要課題といえると思います。自分の作品を待ってくれているお客様がいる ということは、作家様自身のモチベーションを高める上でもとても大切です。お客様にご自身の思いや、世界観をわかってもらえて、お客様とその価値観を共有できるようになると ファンになってもらえます。
また、逆にお客様の顔が見えてくることで あ〜あのお客様はこんなことに糸を利用されていて、こんな糸を求めておいでなのだから、こういう糸を紡いだら喜んでくれそう とか手紡ぎ作家様の方が お客様に歩み寄り 寄り添う糸紡ぎもできるようになってきます。同じ世界観を共有するお客様だからこそできることですよね
インターネットの活用
ネット販売の知識が必要であること! 現代において インターネットの利用は、やはり不可欠! なにかしらのネット上での活動は必要と考えています。 ご自身の作品を知ってもらう機会を増やす。露出度を増やす という意味において、インターネットは大いに活用したい分野だと考えています。
メリットとしては、場所や時間に関係なく ご自身の作品を見ていただくことができることだと思います。
デメリットとしては、糸を触ってもらえないので、実際の手触りや、太さの感覚を伝えにくいということでしょうか
それでも 知ってもらえなければ、その先に進むことはできませんので、上手に写真を撮ってネット上に発表することも 勉強する必要がありそうです。
また、SNSやブログなどは、お客様との交流の場にもなるかもしれません
続けていくことの大切さ・難しさ
作家活動を続ける中で、もっとも難しいのがこの継続 ということではないでしょうか
ネットショップを立ち上げても 一向に売れない
でもそれは当たり前 だれもあなたのこともあなたの商品も知らないのですから、 努力していろいろとやってみても、それが半年 一年も続けば いい加減いやになってきます。トライアンドエラーを繰り返し、やっと売れるようになってみても まったく儲けがでないどころか赤字かも・・・
こんなこと続けていてもしょうがないわ いい加減あきちゃった
な〜んていうこともありそうですよね
では、はたして手紡ぎで生活できるのか?
正直 これは私の感覚としてですが、紡いだ糸の販売のみで生活するのは、非常に難しいと考えています。
もちろん 全く無理ということではないと思いますが、我々のような一般人が手紡ぎ糸の販売のみで生計を立てるのは、かなりきびしいと思っています。
では、方法はないのか というとそんなことはありません。 手紡ぎの販売にいろいろとプラスすることで生計をたてている方もいるし、この業界でちゃんと利益をだしている方は、いるものです。
手紡ぎ糸の販売値段について考える
手紡ぎの毛糸 = 高くて買えないわ
というイメージが定着しているようですが、実際どうなのでしょうか?
たとえば、量販店で売られている紡績糸のお値段をみると 安いものは一玉¥65 から 高いものは¥4〜5000 くらいまで おそらく売れ筋は、一玉¥300〜¥1200 といったところかと思います。
では、当店の作家さんたちのお値段 もしくは ミンネやクリーマなどで販売されている作家様たちの1カセ(30〜50グラム)のお値段はというと、¥1000〜¥4000 といったところかと思います。
では はたして作家様たちは利益がでているのでしょうか?
手紡ぎ糸ができるまでにかかる時間と手間賃・原材料費
ここで、 原価計算をしてみたいと思います。
1)原毛 100グラム ¥500〜¥1500程度(カシミヤなどであれば、¥4000〜¥6000くらい)
2)仕入れにかかる 送料 電車賃など 場合によりますが、ここでは、¥350としてみます
3)人件費 時給¥1000と仮定
洗毛 → コームがけ → 染色 → カードがけ → 紡ぎ → 撚り留め
約10時間とした場合(乾燥時間や、待ち時間を除く)
時給¥1000 × 10時間 = ¥10000
4)染料や媒染剤、洗剤 柔軟剤 ビニール手袋や、その他の必要経費(水道 光熱費など含む) ¥500〜¥2000
5)販売手数料(ミンネやクリーマは販売値段の1割 iichiは2割)個人ショップでも カートシステム(たとえばカラーミーショップなど)の月々のシステム使用料金 BASEなら決済手数料 サーバに直接システムをインストールして運営するにしても レンタルサーバ代 ドメイン代 などなど
ここまでで すでに 約¥13000〜¥15000ちかくかかっている計算になります。
さらに イベントなどで売る場合は、出店料がかかります。
それを考えると現在 糸の販売をされている作家様がたは、ほぼ 自分の人件費を含まない必要経費のみの値段で販売されていることになります。
もし 企業がこれを事業としてやるなら、原価の3倍ほどの値段に設定するのが普通ですから、 50グラムカセなら、上記の計算の半分 の約3倍で
50グラムかせの毛糸 1カセが約¥20000 ということになります。
そんな毛糸を買う人がはたしているでしょうか?
当店でも 作家様の言い値に送料を加算したお値段のみで販売していますので、店での手数料はほぼありません。ボランティアです。
それでも、作家様から当店が毛糸を買い取ることで、その作家様が次の羊毛を仕入れる資金の一部になるのであれば、そこでまた、その作家様が勉強することができるのではないかという思いから 儲けなしの運営を続けています。 というより買取値段を考えれば、まったくの赤字です。
糸の販売以外の収入源を確保する
では 作家の皆さんはどのように生計を立てていらっしゃるのでしょうか?
1)全く別の職業を持っていて、そちらで生計を立てつつ糸紡ぎをしている
2)手紡ぎ糸の他に 利益になりそうなものを合わせて販売されている(アートヤーンアクセサリーなど)
3)材料や道具を販売しつつ 手紡ぎをしている
4)ご家庭の主婦のみなさんや年金生活をされている方など
5)カルチャーセンターの先生や、ワークショップ、ご自宅でお教室を開いて生徒さんからのお月謝で生計をたてている
おおよそこのような感じではないかと思います。
かく言う私自身も 現在 金属製品 メダル・コイン・アクセサリー などの原型 型 を製造する工房の版下絵師という職人として生計をたてつつ 手紡ぎの活動をつづけている一人です。
お教室やワークショップの運営
手紡ぎを仕事にするために一番多くの方が やっているのは、このお教室の運営 ワークショップの開催 などだと思います。
イベントにワークショップで参加されていたり、独自に場所を借りてのワークショップを開いたり、月に何日かお教室の日にちを決めて生徒さんに教えたり
ただし、最初は生徒さんを集めることに労力を費やすことになります。
せっかく用意した ワークショップも参加者が少なければ、赤字ということもありますし、 お教室も場所を借りているのであれば家賃がかかりますので、最低でも何人以上いないと ということもあるかもしれません。
ご自宅やご近所のニットカフェやハンドメイドカフェのようなところを利用できれば、少人数でも大丈夫でしょうか しかしカフェの場合は、飲食代金はかかりますよね
また、ワークショップに紡ぎ車を持ち込んだりした場合は、輸送費もみなければいけません
電車などの本人の移動に必要な交通費もしかりです
リアルでの指導 運営には、そういった費用もかかることを考慮しないといけません
これから手紡ぎをはじめる方へ
では最後に これから手紡ぎをはじめたいという方に、お話しておきたいことです。
ここまで読んでくださった中には、あ〜 そんなに儲からないんだったら、やめておこう と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
お金を目的にするのであれば、確かにもっと稼げる仕事を見つけた方がいいと思います。
でも、そもそも糸紡ぎをはじめる目的が何なのかをしっかり持っている方にとっては、「そこじゃないのよ」ということになります。
1)趣味で糸紡ぎをはじめてみたい ただ やってみたい
2)味のある編み地を作るために 市販糸にはない自分で紡いだ毛糸で編み物をしたい
3)毛糸が大好き 羊毛が大好き ほわほわに触れていることが幸せ
4)機織りをする手紡ぎ糸を自分で紡ぎたい。市販糸では自分の求める織物はできない。
5)毛糸でアート作品を作りたい・アートヤーンに魅せられてアーティストとして活動したい
6)手紡ぎという文化を残すために活動したい
など、目的はいろいろです
ただ、ひとつ言えるのは、食べていかれる環境が確保できなければ、続けていくこともできないという現実です。
手紡ぎ文化を絶やさないために
日本にセーターや毛織物といったウール文化が入ってきたのは、おそらく明治以降のことではないでしょうか
そもそも日本の糸紡ぎといったら、
1)絹
2)綿
3)麻
が代表で、ウールは、下にみられる傾向があります。値段も絹織物にくらべてウールは、安物 という風にしか見られてきませんでした。
そもそも ウール文化は北欧の伝統工芸に値するもので、日本ではまだまだ、歴史が浅く 伝統工芸の仲間入りをしていない状態と思えます。
「ほわほわの手仕事倶楽部」での取り組み
近年 日本の羊さんを飼育する牧場さんも良い羊毛が採れるよう工夫をされたり、環境を整えたり 日本の毛刈り師さんも がんばっていたり、今後の日本の羊毛文化を支える下地ができつつあるように思います。
そこで「ほわほわの手仕事倶楽部」では、
「日本の羊毛文化をハンドメイドしよう」
をスローガンに今後の活動を進めていきたいと考えています。
日本 欧米 を問わず、伝統の技術を継承する職人さんが絶滅の危機に瀕している今日この頃、 たとえば 伝統のシェットランドレースを製造販売する工房はすでになく、一部の技術を有する人がぽちぽちと家庭で趣味としてつづけているだけ というように どんどん手仕事でやってきた 美しい製品が失われていく現状があります。
しかし、日本の羊毛文化は、始まったばかりとも言えるものだと考えています。今後 手紡ぎ 手織り 手編み など羊毛を使った手仕事を趣味としてなさる方、 プロとして活動する方 どちらも応援していきたいと考えております。
具体的な活動については、順次 倶楽部サイトにて お知らせしていくつもりですが、国産羊毛オンリーのセーターを 紡ぎ手の皆様 編み手の皆様とともに制作 発表するのが2020年〜2021年の目標のひとつとして考えております。
また、初心者の方のための動画で学べるの通信教育もございます。興味のある方は、ぜひ見に行ってみてください。
手紡ぎのお道具が自由に使える「地下工房」では、随時ワークショップやフリーレッスンのご予約も承っております。
毛糸を紡ごう!!やり方動画付、初めての手紡ぎ用スピンドルセット・道具一式 Spin1) 糸紡ぎをはじめてみたい 毛糸を紡ぎたい でも どうやって紡げばいいの?
何が必要なの? 何を揃えれば始められるの?手紡ぎに必要な道具がワンセットになった、はじめての方のための 糸紡ぎセット(紡ぎ方動画付き)の販売(通販)です
手紡ぎ糸の販売をご希望の作家様へご案内
年度ごとに募集いたします「手紡ぎ作家様募集」については、下記のページをご覧ください。
第一期 第二期 の募集案内です。
本年度の「第三期手紡ぎ作家様募集」は終了いたしましたが、もし、ご希望でしたら、別途お問い合わせください。
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